目で見てわかる創発現象(Webページ上で動くデモをいくつか用意しました.) NEW!
2016年度メンバ
- Reiji SUZUKI(Associate Professor)
- Toshiya KODERA (M)
- Fumiya MASUDA(M)
- Masanori TSUCHIYA (M)
- Naoaki CHIBA (M)
- Naran (B)
- Shinji SUMITANI (B)
※鈴木ユニットは名古屋大学大学院情報科学研究科有田研究室と一体となって活動しています
研究の方針
この世界は,たくさんの要素が集まって,互いに影響しあうことで出来上がっています.このとき,各要素を見ているだけでは予測が
つかないような特性が,集まり全体の特徴として現れることを創発現象と言います.この創発現象は,生命を生命らしくする大事な特徴の一つだと考えられてい
ますが,果たしてどのようなメカニズムで生じているのでしょうか?コンピュータの中に人工世界(社会)を作り出し,その中で繰り広げられる主体間の相互作
用の様子を観察することで,創発的な現象が生じる鍵となるメカニズムを明らかにしようとしています.具体的には次のようなトピックに焦点を当てて研究して
います.
主なテーマ
- 進化と学習の相互作用,ボールドウィン効果
生物には,個体レベルの学習と,集団レベルの進化という2つの適応的なプロセスが存在します.これらがどのような関係を持っているか,また,その関係がど
のように変化してきたかは,いわゆるLamarck的な獲得形質の遺伝の是非に端を発する100年以上前から議論されてきた生物学的に重要な問題となって
います.もちろん,現在では獲得形質が遺伝する仕組みの存在は否定されていますが,それでもなお,生涯のうちで個体が環境と相互作用することで生じる表現
型の変化=表現型可塑性が,遺伝子レベルの進化に大きな影響を与えうるということが示されています.
この研究室では,進化と学習の相互作用のひとつであるボールドウィン効果と呼ばれる現象に注目し,進化の過程に対する学習の役割のダイナミックな移り変わ
りについて,抽象モデルを用いて解析しています.
- 進化と学習のハイブリッドなシステムの設計手法の構築
近年,例えば,遺伝的アルゴリズムと強化学習のように,進化的計算手法と機械学習を組み合わせたハイブリッドなシステムの構築が注目されています.そこ
で,本研究室では,上記のBaldwin効果のような進化と学習の相互作用に関する生物学的知見を踏まえ,工学的に有効なハイブリッドシステムの設計手法
について検討しています.
2つのシステムを単に合わせるだけでなく,合わさることでシナジー効果が生じるような,真に融合したシステム構築を目指しています.
- 進化とニッチ構築
「生物は(進化の過程で)自らを環境に適応するように作り変えてきた」という話をよく耳にしますが,最近,「生物は自らが適応的になるように環境を作り変
えてきた」という新しい考え方を取り入れた研究がなされてきています.このような,生物がもたらす環境の改変はニッチ構築と呼ばれ,バクテリアの動物質の
分解から,トリやビーバーなど多くの動物の巣作り,人間の文化的活動まで至る所で存在し,ニッチ構築を行う生物やその周りの生物たちの進化の過程に大きな
影響を与えてきたと考えられます.そこで,ニッチ構築を考慮した環境との相互作用に注目した人工生命モデルを構築し,そこに存在する普遍的な進化ダイナミ
クスを明らかにしようとしています.
- 協調行動の創発と進化,空間的局所性の進化
利己的な集団において,どのようにして協調行動が生じるかは,繰り返し囚人のジレンマゲームをはじめとして,さまざまな文脈で議論されてきました.我々
は,個体間の相互作用の関係とその進化が協調行動の創発に与える影響に注目し,その共進化の過程の解明を目指しています.
- 野鳥の歌を介した相互作用の理解
野鳥は春から夏の繁殖期にかけて,縄張りの主張や求愛のために雄が歌を歌います.我々は歌を介した種間・個体間の相互作用に興味を持っていて,人工生命モ
デルやAI技術を活用した理解に関する基礎的研究を行っています.具体的には,種間において,同時に歌うことを避ける時間的重複回避行動の適応的意義を
エージェントベース進化モデルを用いて調べています.また,最近では,名古屋大学の演習林(豊田市稲武町)やカリフォルニアにおいて,マイクロホンアレイ
を用いて実際の歌行動を録音し,ロボット聴覚ソフトHARKを用いて分析することも始めています.
研究方針
上にあげたようなトピックを起点として,「どんな点が面白くて,これまでどんなことがわかっていて,しかしどんな点がいまだ明ら
かになっていなくて,それに対してどんな新しいアプローチの方法があるか」,ということを各メンバが自主的に探し出し,全体として意義のある研究となる
テーマを,試行錯誤を重ねつつ決定していきます.もちろん,これまでのテーマにとらわれず,人工生命の研究領域にかかわる新たなトピックを開拓してもかま
いません.いずれにしても,各自が心から興味を持てる「研究テーマ=面白い問い」を見つけ,心の底から楽しいと思いながら研究できることが,院生時代を有
益にすごすための秘訣です.
そのために,研究に必要な環境と,週2回程度のミーティング(研究報告会)はもとより,随時熱い(?)ディスカッションを重ねています.
院生募集
以上の方針のもと,名古屋大学人工生命ラボラトリィ鈴木ユニットで修士課程の研究をしたい人は,名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科
学専攻に入学する必要があります.興味のある方は気軽にこちらま
でお問い合わせください.
- 名前:鈴木 麗璽(SUZUKI Reiji)
- 所属:名古屋大学大学院 情報科学研究科 複雑系科学専攻 創発システム論講座 准教授
- 所属学会:人工知能学会,情報処理学会,日本進化学会,日本数理生物学会,International Society of Artificial
Life
- 研究分野:進化と学習の相互作用,進化とニッチ構築,協調行動の創発,エージェントベースモデリング,人工生命
詳しくは名
古屋大学教員プロフィールをご覧下さい.
名古屋大学 大学院情報科学研究科 創発システム論講座 鈴木麗璽(reiji@is.nagoya-u.ac.jp)