iPad本日発売,孫社長,イマジネーション,おまけに人工生命

有田 隆也

2010年5月28日


今日,日本でもiPadが発売されたれた.アップル社の携帯型情報端末である.値段が比較的安いので,まずは,iPhone,iPodTouchユーザの数割が買うだろうが,一般家庭のお茶の間にも,あっという間に進出していくだろう.

「iPadって,結局,iPhoneを大きくしただけじゃないの」と言われている.それは間違いとは言えないが,その大きさの差が大きいのだ.「画用紙って,結局,メモ帳を大きくしただけでしょう」と言われても,誰もピンとこないだろう.このあたりは,イマジネーションだ.画用紙に好きな色で,紙からあふれるような絵を描く喜びを覚えている(誰でも皆小さいことは天才画家ではなかったか?)人ほど,その単なる大きさの違いがどういうものか,よくわかるはずだ.iPadもそんなものだろう.

そういえば,思い出す.朝から発売イベントを笑顔でこなし,その後の(たぶん)昼食中にも,「感涙。RT @akio0911 : 個人的に一番潰れて欲しくないキャリアはソフトバンクです。‥」などと,とつぶやいているソフトバンクの孫社長が,理想とイマジネーションの人だったことを. もう30年近くも前,ソフトバンクがホヤホヤだったころの孫さん のイメージは,安物のサンダル履きでペタペタとフロアに現れては,相手構わずにニコニコと自分の理想を語る,憎めない人というものだった.社員がすこしず つ増えていっても,孫さんは誰からも愛されるキャラクターだった.会議でも,議論がしみったれた現実的なところに落ち込みそうになったり,後ろ向きになりかけると,「まあ,そんな事言わないでさあ,*くん」と,孫さんは自分のアイディアを語りだすのだった.

人工生命の研究は,イマジネーションのない人には,非常に厳しい.好きにプログラミングして,人に「これは面白いっ!」と言わせるような結果をいかに創発させるかに専らかかっている.前もって,あるいは結果が出つつあるときに,イカしたシナリオを描けるようなイマジネーションがないと,見向きもされない.アイディアがないなら,いくら計算機が計算万能性をもっているからといっても,計算機はまったくの手持ち無沙汰状態である.

研究の成果が人の胸を打つかどうか,それは,ひとつには,その研究がいかに深いところを狙おうとしているかということに依存する.深いところ,そう,普遍的であればあるほど,その成果は迫力を増す.イマジネーションが働かず,目先の具体的で些細なことにしか想像が及ばないなら,その具体的で些細なことに興味のある人だけにしかアピールしない.

つまり,人工生命の研究は,すごくクリエイティブで楽しいのであるが,研究する人に突きつけられている刃先は鋭いということだ.

(おまけ)本研究室の成果のiPhoneアプリiSoundScapeの一般公開近し(か?).